第6章 緑生期
第4話 お好み焼きなら徳川で
新店舗は木下の活躍もありすぐに軌道に乗ることができた
いつもの熱い缶コーヒーを飲みながら考えていた
みんな明るく元気だしな… ※当時の採用基準は声が大きいこと
資料もな… ※当時すべての資料をカラーしているは部屋店だけである
名刺もな… ※常にカッコイイ名刺を追求している
HPもな… ※古賀の手作りである
Act…
「そろそろかな」
「う~ん」
タバコに火をつけながらぶつぶつと考え込んでいた
新入社員の研修を終えたばかりだが
来年の採用真っ只中なのだ
松田は採用に一番必要なものはブランディングであると考えている
だが新卒採用にお金を使っているのでいつも金欠なのだ
「なんかないかな」
タバコを咥え本棚の前で本を見つめる
ふと目にとまる
やりたいことをやれ 本田宗一郎
松田は本田宗一郎が大好きだ
「よしやろう」
創業間もない部屋店がTVCMをやることに決めた
佐々木が打ち合わせにやってきた
「はじめまして」
変り者の松田を今後10年以上担当することになる男である
「どんなCMを作りたいですか?」
「とりあえず決めているのは出演者は社員です」
「カッコイイやつがいいですね」
「あとつくるのにいくらぐらいかかりますか?」
ろくすっぽ調べず進めるのが得意な松田
「:::万ぐらいですかね」
!!!「そんなにですか!」
思っていた金額でない
「スタジオも照明もみんなプロなので高くはないかと」
本職の佐々木は平然と答える
やばいな…松田
お金ないしどうしようか
でもやるって決めたしな
「まいっか仕事で返せばいっか」
いつも前向きな松田の得意技である
この件は当分黙っておく事に強く決めた
「佐々木さんよろしくお願いします」
「もちろんです!ラフ画作って来週きます」
「カッコイイやつお願いしますね」
待ちきれない様子で見送った
数日後
「う~んなんか違うんですよね…」
何枚かのラフを見ながら納得ができない
納得ができないものは絶対に進めない男である
こまった佐々木
「どうしましょうか?」
「う~ん…」
立ち上がりポケットに手を入れて店内を歩きはじめた
CMのはずさない基本はアニメと動物と子供か…
カッコイイのが創りたいよな…
「よっしゃこれでいこう!」
「いい事思いついたんで一本電話入れさせてください」
「...お疲れ様。儲かってるかね」
「儲かってます」
隙なく答えを返す男は元田である
「そうい~や自分ところの娘は、自分に似てべっぴんじゃのう」
「ありがとうございます」
何のこと分からず返す
「ちょいとCM創ろうと思うけん出てもらえんかの」
「娘ですか」
「ダメかの」
「喜ぶと思います」
「さすが、まだ何も決まってなけどよろしくな」
元田はスタイル抜群のイケメンパパである
娘にしっかりとDNAを引き継いでいた
「主役は子供で決めました」
何か思いついたように調子にのる松田
「カッコイイやつでなくてもいいのですか」佐々木
「作戦変更です」
「ラフ創り直してきますね」佐々木
「大丈夫ですよ!もう決めましたので」
「はやいですね」
切り替えのはやさに驚く佐々木
「徳川作戦でいきます」
「徳川ですか…?」
何のことかわからない佐々木
「さっさっさっさっさっと!ですよ!」
広島の生まれなら誰でも知っている伝説のCM
「お好み焼きなら徳川でですよ!!」
「トムとジェリーの!」
もちろん佐々木もよく知っている
松田が子供の頃は夕方6時からトムとジェリーを毎日放送していた
広島の子供達は何年も毎日みていた
その時間の提供が徳川である
トムとジェリーの放映がなくなるまで君臨していた
「何十年先でも口ずさめるの創ってください」
「わかりましたラフと歌を創ってきます」
力強く頷き足速にかけって行った
子供たちが大きくなった時に知っている会社にしようと決めた
2人は怒るかな…
タバコに火をつけニヤリと笑った
2019/12/20 17:25