第5章 転換期
第4話 情熱のカテゴリー
「パチンコです!! 」
よくよく聞けば
朝から晩までパチンコに向き合い
毎日真剣勝負をしているという。
(無職というかパチプロか!? )
同年代の部屋店のキャスト達はお客様の為に、
自分の成長の為に日夜仕事に向き合っている
目の前の彼は日夜パチンコ台に向き合っている
ますます「不採用」の文字が頭を占める中
ふと、日本電産の永守社長の言葉を思い出した
「能力の差は2~3倍。やる気の差は100倍」
物事がなんであれ一生懸命に没頭出来ることは良いことだ
そういう人間は仕事も同様に一生懸命出来る人間ではないか
目の前の彼は365日朝から晩までパチンコに没頭している
もしかしたら彼は大成するかもしれない
松田は彼のパチンコへの情熱が
本物かどうか見極めるために更に質問する
「パチンコについて教えてもらえるか?」
彼は一瞬眼光が鋭くなり
そして熱く・熱く・熱~く、パチンコについて語り始めた
朝一番に行ったからといっても出るわけではないこと。
千回まわして何回当たったら設定が良いとか
様々な数値を頭に入れてデータ分析する。などなど。
ギャンブルをしない松田には
彼が何を言っているのかほとんどわからなかったが
彼がパチンコに情熱を注いでいることだけは十二分に理解できた。
なかなかに見込みがある。
「よくわかった。」
彼の止まらない話しに松田が言葉を挟む。
「うちの会社はギャンブルを禁止しているのだが、
パチンコに注いでいた情熱を仕事に注ぐことが出来るか? 」
彼はひと呼吸おいて
「はい!」
とはっきりと答えた
彼の名前は副田(そいだ)
彼は入社後、初めての職種で業績を残し続け
今や部屋店には欠かせない大エースに成長した
彼の非凡さが伝わるエピソードがある。
彼は常日頃
「一度見たものは覚える自信があります」
と豪語していた。
不動産業界の必須資格で「宅地建物取引主任者」がある
合格に必要な勉強時間は一般的に300時間と言われているが
試験3週間前に
「一度見たものは覚える自信がありますから大丈夫です」
と言い、なんと3週間で一発合格したのだ
「すごいな。釘の目を見ることで鍛えられた
記憶力はハンパないな」
ギャンブルで裏付けられた能力が
如何なく発揮され松田も笑うしかなかった。
2013/06/13 20:14