第4章 決意
第5話 伝説のイケメン
ある日の午後、吹田は松田のもとを訪れた。
「父親の体調がすぐれない。地元に帰ろうと思います。 」
突然のことだった。
やっと会社が軌道に乗り始めてこれからの発展を
キャスト全員が楽しみにしている。
これからという時に会社を去らなければならない。
吹田の心情は容易に想像できた。
松田は吹田の申し出を黙って受け入れた。
吹田は創業メンバーの一人だ。
創業時から苦楽を共にしてきた仲だ。
ミドルネームは「知識の吹田」
吹田はある芸能人に間違えられ
ファンに追い掛け回されるほどのイケメンである。
そして、超がつくほどの物件オタクでもある。
ルックスも良く、物件知識もトップクラス。
その結果、契約率95%を超えるトップアドバイザーとなった。
もう10年近く前になるある月の契約組数はいまだに
破られることのないレコードとなっている。
部屋店を去り、吹田は地元のある企業に応募した。
中途採用の枠は一人。
後から知ると、応募数は200もあった。競争率200倍の超難関だ!
そして、採用されたのは『 吹田 』だ。
面接官は聞いた。
「今まで何をしていましたか?」
吹田は答えた。
「会社を創りました。」
今までやってきたこと、創り上げたこと、 行動と実績が
彼を200倍の難関を突破させた。
先日、久しぶりに吹田と電話で話をした。
「今までしんどい事もありました。
でも、逃げずにチャレンジし続けて良かったです。
今もチャレンジし続けてますけどね。
毎日、充実してますよ。僕は幸せです。」
電話の吹田の声は明るかった。
2012/12/22 20:36