第3章 船出
第11話 それぞれの想い(3)
「元田くんに何が起きているのかよく分かった。
・・それは辛かったね。
・・・悔しかったね。」
悔しくて・・・悔しくて・・・
気付くと木下は泣いていた。
涙があふれて止まらなかった。
「怒り」、「悔しさ」、「悲しさ」から
自然と感情が涙としてあふれ出てきたのだった。
そして、
それまで気丈に振舞っていた元田の感情もあふれだす!
「そりゃあ悔しいですよ!!!」
涙とともに体の奥から声をしぼりだした。
二人はしばらくの間、人目をはばからず泣いた。
元田は
想いを吐き出すだけ吐き出すと少し落ち着いた様子だった。
このとき、元田の心の中でごろりと何かが動くのを感じた。
想いを共感してくれる人達がいる。
自分の為に本気で涙を流してくれる仲間がいる!
諦めかけた情熱をもう一度取り戻した瞬間だった。
店を出るころ、
「これから共に部屋店を盛り上げていかないか?」
と中本が声をかけた。
数日後、元田から連絡が入る。
「松田社長と会わせてください。」
2012/08/21 16:09