第3章 船出
第10話 それぞれの想い(2)
木下の表情が一気に晴れる!
「もちろん!喜んでっ!」
2002年の春、当時23歳だった木下は転職を決意した。
では、中本の場合はどうか。
彼もまた松田の人柄に惚れていた一人だ。
中本は今でこそ 全国に名前を知られる
トップ営業マンの一人になったが、
当時の彼は
何においても覚えることが苦手でいつも上司に怒られていた。
しかし、一度決めたことは
『出来るまでやる!』
壁にぶつかる度に努力で乗り超え、ぐんぐんと成果を上げていった。
その彼にアドバイスをし、
出来るまで付き合っていたのが当時の上司、松田だった。
中本は自分の事に
ここまで一生懸命になってくれた人に初めて出会えたことに感動し、
この人とこれからも一緒に仕事をしていきたいと考えていた。
そして、木下とほぼ同じ時期に中本にも声がかかる。
「起業しようと思うんだが。どうだ?一緒にやるか?」
間髪いれず
「はい、やります!!」
即答であった。
人が進路を決断するとき、自分の心に
大きな影響を与える人物が必ずいるものだ。
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話を元に戻そう。
元田と木下と中本の三人は数日後、居酒屋で顔を合わせた。
「会社を辞めようと思っています。」
「情熱の男」である元田が経緯を二人に
ポツポツと話しはじめた。
それはどこか冷めた印象すら受けるほど淡々としたものだった。
元田が情熱を持って精力的に活動をしているのを
知っている二人には、話を聞くまで辞める理由が正直見つからなかった。
しかし、話しの内容を静かに聞き終えたとき、
二人はやりきれない気持ちになっていた。
元田は今までに見せたことのない表情(かお)をしていた。
それはとても悲しく、憔悴しきっている事を感じさせた。
そんな時、
木下は溢れてきた感情を抑える事ができず口を開いた。
2012/08/12 18:33