第3章 船出
第9話 それぞれの想い(1)
2004年 夏
初の大型店舗である庚午店が順調なすべり出しを見せていた。
責任者である木下は家主様開拓に出かけていた。
『商品が足りない!!』
嬉しい悲鳴をあげながらひたすら自転車を走らせる。
体中から大粒の汗。。。
目的の家主様宅を目指す中、携帯が鳴った。
電話の相手は・・・のちに、部屋店の重要人物となる
「情熱の元田」だ。
元田とは、おなじ会社で働いた事をきっかけに付き合いがはじまった。
このときは 同業他社で活躍をしていたが、
不動産業界を牽引するという熱い想いを共有する
良き仲間であり良きライバルでもあった。
そんな元田から昼間に電話が入る。
こんな時間に珍しいな。なんだろう?
「もしもし!」
額の汗をぬぐってから電話に出る。
電話の内容は木下の想像をはるかに超えたものだった。
「元田君が会社を辞める!?」
ここで少し話をさかのぼることになるが
木下と中本の入社エピソードをお伝えしようと思う。
木下と中本は元々、代表者の松田と同じ職場で働いていた。
二人の共通の上司が松田である。
2002年の春、木下は松田から居酒屋に呼び出されていた。
木下が到着したとき松田はすでに席についていた。
まずは、いつものようにお酒を交わしながら談笑しあった。
しかし、
木下は呼び出された理由がわからず少し落ち着かない。
その様子を察したかのようにしばらくして松田が本題に入る。
「実はな、独立して会社を興そうと思っているんだ。」
松田は会社を興す理由や想いを語り始めた。
その話を黙って聞いていた木下は思いがけないことでびっくりしたが、
尊敬する上司が語る夢をワクワクして聞いていた。
話が終わりに近づくにつれ、木下は複雑な表情を浮かべていた。
なぜならこの先もずっと一緒に仕事がしたいと強く願っていたからだ。
しかし、
若干23歳の自分が起業という大事なプロジェクトに関われるはずがない。
そう思うと、とても寂しかったのだ。
そんな木下の気持ちを知ってか知らずか、松田は言った。。。
「どうだ?一緒にやらないか?」
木下の表情は一気に晴れる!
「もちろん!喜んで!」
2002年の春、
23歳の木下は転職を決意した。
2012/08/06 23:11