第3章 船出
第7話 どっち?
「良い店舗がありましたよ」
探し物が見つかるときは突然やってくる。
声をかけたのは木下だ。
多くのマンションオーナーとつながりを持つ木下が
「良い店舗がある」
と松田に教えてくれたのである。
木下の情報は「大当たり」する時と「大はずれ」する時と差が激しい。
今回はどっちなのか。。。
ひとまず話を聞く事にした。
「どこのどんなテナントなんだ?」
松田の問いかけに鋭く反応した木下はこう伝えた。
①オーナーは木下が良く知っている
②マンションの1階にある店舗
③場所は広島市西区
④目の前には大きな道路があり渋滞する
⑤商売をするにはあまり良い場所ではないと言われている
⑥そのかわりに家賃を安くしてくれる
⑦とにかく広い!
木下は気持ちが乗っていたのだろう。
文章にするには非常に長文になるため
あえて箇条書きにした。
どうだろう。
松田は頭をフル回転させ、調査した。
「借りよう」
大当たりとまでは行かないが、
人が多く住みたいと考える場所であり、
店舗の前面に4台も駐車スペースがある。
あとは資金面などだ。
まずは借りる事で話を進めることにした。
木下がマンションのオーナーにその旨を伝えた。
すると予期せぬ言葉が返ってきたのだ。
「家賃はそのままでいいから、隣についているスペースも
一緒に使ってくれないか」
「???」
木下は言葉の意味を理解するのに時間を要した。
隣とは、同じくらいの広さで
隣り合わせになっているスペース部分である。
つまり倍の広さを借りても同じ家賃で良い
というのである。
木下はすぐに松田に伝えた。
松田も最初は戸惑ったが、2つ分を借りることにした。
その広さは、本店、中央南支店それぞれの広さの
5倍以上にもなる広さである。
外には目立つように大きな看板を付け、
お店の中は、広いスペースを半分にして、
表側は接客スペース、
裏側は会議室のようなスペースにした。
「当たり」
その他にも交渉する事がある。
広くなればその分、改装費がかさむ。
木下はオーナーに相談した。
すると、
内装・新品のエアコンも全てオーナーがしてくれるという。
そして敷金も安く抑えてくれた。
「大当たり」
なんとも話が良い方向に進んでいくものだ。
よく知っているオーナーとはいえ、
本当にありがたい気持ちでいっぱいだ。
木下はこれからも人との縁を大切にしようと
心に決めた一瞬でもあった。
こうして2004年1月、
部屋店初めての 大型店舗 広島西支店 が誕生した。
2012/04/29 19:14