第1章 由来
第3話 おしゃれな空間

社運をも左右すると言っても
過言ではない重要な
「居酒屋社名決定会議」
乾杯をした頃は、霜で白かった
6つのグラスたちは、
すでに霜が溶け、まるで汗をかいているようにも見える。
5人は自信と不安と2つの感情を持ちながら、
考え温めてきた社名を1人ずつ発表してまわった。
まずは、我先にと言わんばかりに
適応力ナンバーワンの木下がすっと手を上げ、
少し不適な笑みを見せ、口を開いた。
『アラモード・ピエース』
口にした飲み物を吹き出し、笑う者もいたが
まずまずの反応を見せた。
ここは適応力を見せ、
木下は自信を持ってこう続ける。
これには意味があります。
これはフランス語で
『おしゃれな空間』
という意味なのです。
会社もお部屋もおしゃれな空間を創っていく
その思いを乗せ、名前を考えました。
古賀・中本・黒瀬・吹田は思わず
「へぇ~」と声を漏らす。
松田は目を閉じ頷いている。
木下はどうだと言わんばかりの
顔を見せ、発表を終えた。
木下の発表を機に、次から次へと
考えてきた社名が発表される。
最高の知識を持つ吹田は
木下に負けじと自信満々な顔で
『MY STYLE』
いつもだ。
彼はいつも、突然に肝心な事をサラっと言う。
しかし、彼からすると予想外の反応だ。
吹田以外の5人は「あ~」という
気の抜けたような声を出した。
「なんか美容院みたいな名前だな。」
「よくありそうだ。」
など、声は大きくないが聞こえてくる。
5人の反応は可もなく不可もなく
といった所なのだろう。
しかし、発表を終えた吹田の
しっかりとした両肩は、気のせいかもしれないが
安堵からなのか?
反応からなのか?・・・
若干、下がったようにも見えた。
このまま社名会議は混沌とするのだろうか。
それとも全員を納得させる名前が出てくるのか。
6つのグラスたちはこの頃すでにカラになっていた。
2011/03/08 17:25